相続財産調査とは?故人の財産を調べる方法と依頼できる専門家

2025年7月18日
目次

家族が亡くなったときは、相続財産調査が必要です。
スムーズな遺産分割や、相続放棄などの判断には相続財産調査が欠かせません。
本記事では、相続財産調査のやり方や必要性、依頼できる専門家などをわかりやすく解説します。
相続財産調査とは
相続財産調査とは、被相続人(故人)の所有財産や権利などの調査です。
相続手続きの多くは「財産の把握」が前提になるため、できるだけ早めに相続財産調査を完了させる必要があります。
たとえば、相続財産の総額がわからなければ、相続税申告が必要かどうか判断できません。
遺産分割協議を行う際も、相続財産調査が不十分だった場合は、後でトラブルになる可能性があるでしょう。
家族に知らされていない財産は意外に多いため、葬儀や法要が一段落したら、優先的に相続財産を調査してください。
相続財産調査が必要な理由
遺産相続が発生した際は、以下の理由から相続財産調査が必要です。
- 遺産分割協議を開始するため
- 相続財産の評価額を計算するため
- 相続税申告の必要性を判断するため
- 相続放棄の必要性を判断するため
遺産分割協議は「相続財産の情報共有」が必要になるため、あらかじめ被相続人の預貯金や不動産などを調べます。
相続財産調査を漏らすと、遺産分割協議をやり直す場合があるので要注意です。
不動産や株式を相続する場合は、必ず相続発生時の評価額を調べてください。
相続財産の評価額がわからなければ、相続税の申告漏れや過少申告につながる恐れがあります。
故人の負債も調べると、相続放棄するかどうかの判断に迷いません。
なお、相続発生後は「法定相続人の確定」も必要ですが、故人の戸籍謄本を調査するため、窓口は市町村役場のみです。
相続財産調査の窓口は金融機関や法務局、証券会社など多岐にわたるので、難易度の高い作業になるでしょう。
相続財産調査の期限
相続財産調査に法律上の期限はありません。
ただし、以下の相続手続きを行う場合は、一定期間内の相続財産調査が必要です。
- 相続放棄または限定承認:相続開始を知った日から3ヶ月以内
- 相続税申告:相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
- 相続登記:不動産の相続人が確定した日から3年以内
相続放棄と限定承認の期限は3ヶ月以内ですが、相続発生直後は葬儀や法要で慌ただしくなります。
借金も含めて相続財産を把握する場合、実質的な調査期間は2ヵ月程度でしょう。
相続税申告は期限延長の概念がないため、間に合わなかったときは納期限の翌日から延滞税が発生します。
相続登記の期限を過ぎると、10万円以下の過料になる恐れがあるので注意してください。
相続財産調査の対象
相続財産といえば、現金や預貯金などを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、マイナスの財産も相続の対象となるため、以下のように借金や未払金も調査してください。
プラスの相続財産
プラスの相続財産とは、経済的価値のある財産を指します。
具体的には以下のような例があり、一部の権利も相続財産調査の対象です。
- 現金
- 預貯金
- 不動産
- 株式などの有価証券
- 貴金属や宝石類
- 自動車
- 著作権やゴルフ会員権
- 相続発生前7年間の生前贈与(経過措置あり)
- みなし相続財産(死亡保険金や死亡退職金など)
相続発生間7年間の生前贈与は相続税の課税対象になるため、プラスの相続財産にカウントしてください。
ただし、生前贈与の加算期間は2024年1月1日に改正があり、過去7年分をすべてカウントするのは2031年1月1日以降に発生した相続です。
死亡保険金や死亡退職金は遺産分割の対象ではありませんが、「500万円×法定相続人の数」を超えた部分に相続税がかかります。
マイナスの相続財産
マイナスの相続財産とは、借金や未払金などの負債です。
相続財産調査の際には、以下のマイナス財産も把握してください。
- 借金
- 住宅ローン
- 未払いの入院費や介護施設の利用料
- 未納の税金
- 連帯保証債務
高額な借金やローンが残っている場合は、相続放棄の検討が必要でしょう。
なお、住宅ローンの契約時に団体信用生命保険に加入していると、ローンの残りが保険金によって完済されます。
相続財産調査のやり方
相続財産調査を自分でやるときは、遺品やパソコン、郵便物などを確認してください。
調査漏れはトラブルの原因になるため、金融機関や証券会社にも照会しておきましょう。
具体的には、以下のように相続財産調査を進めます。
不動産の調査方法
不動産を調査するときは、登記済証(権利証)や名寄帳を確認してください。
登記済証は金庫などに保管されているケースが多く、名寄帳は市町村役場で発行してもらえます。
固定資産税の課税明細書も手掛かりにはなりますが、資産価値が極端に低い不動産や共有不動産は記載されないこともあるため、名寄帳を取得した方がよいでしょう。
名寄帳には被相続人名義の不動産がすべて記載されるので、不動産の調査漏れを防止できます。
なお、不動産がA市とB町などにある場合は、それぞれの市町村役場で名寄帳を取得する必要があります。
預貯金口座の調査方法
預貯金口座を調査するときは、通帳やキャッシュカードを探してください。
通帳やキャッシュカードで口座番号がわかれば、金融機関に残高証明書と取引履歴を請求しましょう。
相続税は死亡時の預金残高が課税対象になるので、通帳が記帳されていない場合は残高証明書が必要です。
取引履歴には過去の入出金や振込みなどが記載されるため、不動産購入や生前贈与が判明する場合があるでしょう。
被相続人のパソコンやスマートフォンを調べると、ネット銀行の口座が見つかるケースもあります。
被相続人あての郵便物もすべて確認し、通帳を発行しないタイプの預貯金口座も調べてください。
株式などの調査方法
株式などの有価証券を調査するときは、パソコンやスマートフォンを確認してみましょう。
パソコンやスマートフォンには、証券口座のログインページを登録している場合があります。
郵便物も調査しておけば、株主総会の案内や、取引残高報告書などから株式の保有がわかります。
証券口座の手掛かりがないときは、証券保管振替機構に開示請求してください。
参考元:証券保管振替機構
借金の調査方法
借金を調査する場合は、金銭消費貸借契約書や借用書を探してみましょう。
被相続人あての郵便物を調査すると、債権者から返済状況の明細が届いている場合もあります。
返済中の住宅ローンがある場合は、通帳の出金欄に銀行名が記載されています。
借金があるかどうかわからないときは、以下の信用情報登録機関に照会してください。
- 一般社団法人全国銀行協会:銀行の借金
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC):クレジットカード会社の借金
- 株式会社日本信用情報機構(JICC):消費者金融の借金
なお、個人からの借金は信用情報登録機関に登録されないため、督促状や督促メールなどを調べる必要があります。
参考元:一般社団法人全国銀行協会
相続財産調査を依頼できる専門家
相続財産調査に自分で対応できないときは、以下の専門家に代行してもらえます。
依頼先 | 調査費用の目安 | 依頼するかどうかの判断基準 |
弁護士 | 10万~30万円程度 | 相続争いが起きている場合等 |
税理士 | 遺産総額の0.5~1.0%程度 | 相続税がかかる場合 |
司法書士 | 10万~30万円程度 | 相続登記を依頼したい場合等 |
信託銀行 | 100万円程度 | 相続手続きの窓口を一本化したい場合 |
相続財産調査に不安がある場合は、まずは司法書士に相続財産調査を依頼してみましょう。
まとめ
相続財産調査を自分でやるときは、相続放棄などの期限に注意してください。
各種手続きの期限を過ぎた場合、借金を相続したり延滞税がかかったりするため、何らかの不利益につながります。
ただし、被相続人の自宅が遠方にあると、地元の市町村役場や銀行などに出向き、不動産や預貯金を調査しなければなりません。
相続財産調査に困ったときは、司法書士などの専門家に相談してみましょう。
監修者プロフィール


代表池末 晋介(イケスエ シンスケ)
所有資格 |
司法書士 登録番号 第488号 簡裁訴訟代理業務認定番号 第401634号 |
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所属団体 |
群馬司法書士会 全国クレジット・サラ金問題対策協議会会員 ぐんまクレジット・サラ金問題対策協議会幹事 |
経歴 |
群馬司法書士会 クレサラ・ヤミ金問題対策委員会委員長 群馬司法書士会 消費者委員会委員長 群馬司法書士会 理事 等を歴任 |
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