相続

遺産分割協議とは、遺言書がないときに必要な相続人全員の話し合いです。

協議に参加する人や、話し合う内容を理解すると、相続手続きがスムーズになるでしょう。

本記事では、遺産分割協議の進め方や、困ったときに相談できる専門家を詳しく解説します。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、遺産の分け方を決める話し合いです。

遺言書がない場合は、相続人全員の協議により、「誰がどの財産を相続するのか」または「誰がどの割合で相続するのか」を決定します。

なお、遺言書が作成されていても、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議で財産の分け方を決められるけーすもあります。

各相続人の住所が離れている場合は、電話やメール、オンラインミーティングで遺産分割協議を進めてもよいでしょう。

遺産分割協議は相続人全員の参加が必要

遺産分割協議を行う際は、相続人全員の参加が必要です。

相続人が1人でも欠けていると、遺産分割協議は無効となります。

一部の相続人を除外して遺産分割協議を進めた場合、トラブルの原因にもなるので注意してください。

仲が悪い相続人がいる場合でも、必ず遺産分割協議に参加してもらいましょう。

相続分を放棄する人も遺産分割協議に参加する

相続分の放棄とは、法定相続分を受け取らず、他の相続人に配分する行為です。

簡単にいうと、何も相続しない状況ですが、相続分を放棄する人も遺産分割協議への参加が必要です。

相続分を放棄しても、相続人の地位には影響がないため、被相続人(亡くなった人)に借金があった場合は、返済義務を引き継がなくてはなりません。

遺産分割協議書を作成する際も、相続分の放棄を記載して、署名捺印する必要があります。

なお、相続分の放棄は相続人同士の取り決めですが、「相続放棄」は家庭裁判所を介した手続きです。

相続放棄が認められると、預貯金や不動産などは相続できませんが、借金の返済義務も免除されます。

遺産の分割方法

遺産分割協議では、以下の方法で遺産を分割します。

  • 現物分割:相続財産を現物の状態で分割(相続)する方法
  • 共有分割:法定相続分に応じた持分割合で不動産などを共有する方法
  • 換価分割:不動産などの売却代金を分割する方法
  • 代償分割:代償金の支払いにより公平に遺産分割する方法

現物分割の場合、預金口座などをそのままの状態で相続します。

共有分割は複数の相続人で不動産を分割する方法ですが、売却などの契約行為には全員の合意が必要になるため、十分な検討が必要です。

主な相続財産が不動産しかなく、複数の相続人がいる場合は、換価分割や分割方法を検討してみましょう。

遺産分割協議のやり方

遺産分割協議をやるときは、入念な下準備が必要です。

法定相続人や相続財産の調査が完了していると、協議が進みやすくなるでしょう。

具体的な遺産分割協議のやり方は、以下を参考にしてください。

法定相続人の確定

遺産分割協議をやる場合は、まず法定相続人を確定させましょう。

法定相続人は範囲と順位が決まっており、以下のように配偶者と上位の親族のみが該当します。

  • 配偶者は常に相続人となる
  • 第1順位:子ども
  • 第2順位:父母
  • 第3順位:兄弟姉妹

養子や前妻との間に生まれた子、認知された非嫡出子も第1順位の法定相続人になるため、遺産分割協議への参加が必要です。

相続財産の調査

相続財産を調査するときは、以下の財産をすべて洗い出します。

  • 現金や預貯金
  • 株式
  • 不動産
  • 著作権などの知的財産権
  • 自動車
  • 貴金属や美術品
  • 借金

預金通帳やキャッシュカードがあれば、口座番号と取引銀行がわかります。

株式は電子化されているため、差出人が証券会社の郵便物を調べてみましょう。

不動産をすべて把握したいときは、市町村役場で名寄帳を取得してください。

次に法務局で登記事項証明書を取得すると、不動産の詳細情報を確認できます。

借金はマイナスの相続財産となるため、借用書や督促状も探しておきましょう。

相続人全員による協議

法定相続人と相続財産の調査が完了したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。

協議を進める際には、戸籍謄本や登記事項証明書など、関係資料をすべて開示してください。

相続する割合が決まらないときは、以下の法定相続分を目安にします。

  • 相続人が配偶者と子ども:配偶者1/2、子ども1/2
  • 相続人が配偶者と被相続人の父母:配偶者2/3、父母1/3
  • 相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

相続財産は公平に分けられないケースが多いため、被相続人を介護していた人には多めに配分するなど、ある程度の譲歩が必要なばあいもあります。

遺産分割協議書の作成

相続人全員が遺産分割協議に合意したら、遺産分割協議書を作成しておきましょう。

遺産分割協議書は適宜の様式で構いませんが、以下の項目は必ず記載します。

  • 遺産分割協議書(表題)
  • 被相続人の氏名と死亡日
  • 被相続人の本籍地と死亡時の住所
  • 誰が・どの財産を相続するか
  • 相続財産の詳細情報
  • 新たな財産が見つかったときの扱い
  • 遺産分割協議の成立日
  • 相続人全員の署名捺印(実印を使用)

遺産分割協議書の書き方がわからないときは、司法書士等の専門家に相談することをおすすめします。

遺産分割協議書が完成したら、実印の証明として、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議の注意点

遺産分割協議を行う場合、相続人の状況によっては特別代理人が必要です。

成年後見人を選任するケースもあるため、以下の注意点をよく理解しておきましょう。

遺産分割協議の期限

遺産分割協議に期限はありませんが、相続手続きの期限に注意が必要です。

以下の相続手続きには期限があるため、間に合うように協議を進めてください。

  • 相続税申告:相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
  • 相続登記:不動産の相続人が確定してから3年以内

相続税申告の期限を過ぎると、本来納めるべき税金に延滞税などが加算されます。

期限後の相続登記は10万円以下の過料になる恐れがあるため、早めに手続きを済ませておきましょう。

借金の負担割合は法定相続分に応じる

相続財産に借金がある場合、返済負担は法定相続分に応じます。

遺産分割協議で借金の負担割合を決めたとしても、債権者には通用しません。

一部の相続人だけで借金を相続したい場合は、債権者の承認が必要です。

認知症の相続人を交えた遺産分割協議は無効

認知症の相続人も遺産分割協議に参加できますが、協議がまとまったとしても無効です。

すでに認知症となった相続人がいるときは、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立ててください。

成年後見人が選任されると、本人の代理人として遺産分割協議に参加してもらえます。

未成年者の相続人には特別代理人が必要

未成年者とその親が相続人になる場合は、未成年者に対して特別代理人の選任が必要です。

親は未成年の子の法定代理人ですが、相続では利益相反の関係になるため、遺産分割協議の際に親は子の代理人になれません。

特別代理人には資格要件がないので、法定相続人ではない親族(伯父・伯母など)を選任できます。

親族から特別代理人を選任できないときは、司法書士などの専門家に依頼してみましょう。

遺産分割協議で困ったときに相談できる専門家

遺産分割協議で困ったときは、以下の専門家に相談してください。

  • 弁護士:相続トラブルが発生した場合
  • 税理士:相続税が発生する場合
  • 司法書士:相続登記や相続手続き全般を任せたい場合

弁護士は紛争解決を専門としており、遺産分割調停を申し立てる際も、依頼者の代理人にもなってもらえます。

相続税申告は税務調査の対象になりやすいため、不安がある方は、税理士に代行してもらいましょう。

不動産の相続登記を任せたいときは、司法書士に相談してください。

司法書士は業務範囲が広いので、遺産分割協議書の作成や、財産調査も依頼できます。

まとめ

遺産分割協議のやり方には一定のルールがあるため、相続人や相続財産の状況をよく確認してください。

未成年者や認知症の相続人が参加していると、遺産分割協議は成立しません。

相続手続きの期限が迫っている場合は、1日でも早く協議をまとめる必要があります。

遺産分割協議に困ったときは、司法書士などの専門家に相談してみましょう。

監修者プロフィール

代表池末 晋介(イケスエ シンスケ)

所有資格

司法書士 登録番号 第488号

簡裁訴訟代理業務認定番号 第401634号

所属団体

群馬司法書士会

全国クレジット・サラ金問題対策協議会会員

ぐんまクレジット・サラ金問題対策協議会幹事

経歴

群馬司法書士会 クレサラ・ヤミ金問題対策委員会委員長

群馬司法書士会 消費者委員会委員長

群馬司法書士会 理事

等を歴任